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●コンクールレポート●
「第1回全日本アマチュアギターコンクール」
主催:全日本アマチュアギターコンクール実行委員会

我が国のギター(独奏)コンクール史上最多であろう90名を越える申し込みがあった。その上、テープ審査に合格した50名のうち、49名がステージでの最終予選に参加した。そしてさらに、客席は200名を越える人で盛りあがった。
これだけを見ても、今年に産声を上げた“第1回全日本アマチュアギターコンクール”が、いかに待ち望まれていたコンクールであったかを伺い知る事が出来る。
2000年8月20日、全国高校野球“甲子園大会”では、決勝進出を決める白熱した試合が行われる中、東京・三鷹市芸術文化センターでは、アマチュアギタリストの最高峰を決める“ギターの甲子園~第1回全日本アマチュアギターコンクール”が開催された。
まず開会挨拶では、実行委員長・志田英利子が「コンクールを通じて、ギター音楽の普及と発展に努めたい。また、アマチュアギタリストの皆さんにとっても、このコンクールが練習の励みとなり、親睦・交流の場となることを望む。」と述べた。
その後、2度のテープ審査を通過した北海道から四国までの49名による最終予選が始まり、タレガの珠玉の名作『ラグリマ』が演奏された。
この全日本アマチュアギターコンクールの大きな特典のひとつは、ステージで演奏をした全員が、審査員から自分の演奏についてのコメントを受け取れるという点だ。審査員は、一人一人の演奏に対し『メロディー・和音・リズム・表現力』の主要4項目に加え、『ステージマナー・調弦・個性』を加えた計7項目について、各自の評価を付けることになっている。
正直なところ、開演前には「全員にコメントを書くのは重労働」と考えていたが、いざ、演奏が始まると、わずか3分程度に自分の気持ちを全て表現したいという、意欲あふれる熱演が続き、それにつられるように自然とコメントが出てくる。気が付くと決められた7項目だけではなく、自ずとプラスαを一筆書き加える結果となった。ところが、不思議なことに疲れはない。演奏者の出すエネルギーに対し、同等のエネルギーで返答した事がプラスマイナスゼロのバランスを生んだのかもしれない。審査は、原善伸、坂内幸則、志田英利子、管原潤、鈴木大介、高橋望、堀江志磨の7名で行われた。
本選出場者を選出する間に、ステージでは実力派ギタリスト・江間常夫氏の演奏が披露された。相模原に拠点を置き、主に関東で活躍しているためか、遠方からの参加者の中には江間氏を知らない人もいた。また、名前は知っているけれど生演奏を聴くのは今日が初めて、と言う人はかなりいた。そして、それら全ての人が、今日の江間氏の演奏に驚愕し感動したようだ。魔笛、大序曲、グラナダ、アストゥリアスなど…名曲ばかり、約30分の演奏のあと、すぐに本選出場者9名が発表され、6時からの本選まで休憩となった。
実は、この時間帯が主催者側にとっては不安なのだ。
本選に残れなかった参加者とその家族、知人などが、「いや~、借しかったねえ。パァ~と一杯、気晴らしに行こうか。」と、帰ってしまう例は少なくない。実際、ゾロゾロと人が出ていく。なかには「江間さんの演奏が聴けて、もう満足。」と言っている人もいる。本選が始まったらガラ~ンとしてたらどうしよう…と不安はつのる。来賓の方が挨拶して下さるのに、ガラガラで失礼にならないだろうか…などと、余計なことまで考える。休憩といえども、主催者側の気分は休まらない。
そんな事はお構えなしに、すぐに6時はやって来た。恐る恐る会場に入ると、予選の時と同じか、それ以上の人が入っている。ほっと胸をなで下ろす。
本選が始まる前に、実行委員・高橋望から最終予選について「アマチュアという事で、もっとハメを外した演奏が見られるかと思ったが、常識的な解釈がほとんどで、良くもあり、少し寂しい気もあった。また、5小節目の譜読みミスが散見された。」などの審査報告があった。
その後、三鷹市芸術文化振興財団・常務理事の稲留和夫氏ならびに、毎日新聞社八王子支局・支局長の網谷利一郎氏より、来賓挨拶が行われた。
そして、いよいよ本選開始。次に本選出場者と演奏曲目を演奏順に紹介する。
1.大守善久(兵庫県)シンドラーのリスト/サンバースト、2.佐々木信暢(神奈川県)サウダージ3番、3.渡辺隆哉(神奈川県)コユンババ1、4楽章、4.渡辺勇(埼玉県)コユンババ3、4楽章、5.丸山修(三重県)過ぎ去りしトレモロ、6.深澤元(群馬県)、7.水野浩(大阪府)森に夢見る、8.森本素子(長野県)メヌエット/シャコンヌ、9.原田和子(神奈川県)リュート組曲1番~アルマンド、ジーグ。
ご覧いただいた通り、アマチュアとは思えない難曲揃いだ。プロ登竜門のコンクールではないので、各々の演奏に対する評価をここに記す事はやめる。ただ、その演奏レベルは既在するコンクールに引けを取らぬものであったし、曲に対しての思い入れについては、それ以上だったと言っておきたい。
審査員室で討議が童ねられている間、ステージでは本選出場者全員と江間常夫氏によるフリートークが行われていた。この企画もアマチュアのコンクールならではだと思うのだが、司会者がクイズ形式で本選出場者の職業などを紹介し、どのように練習に取り組んでいるかなどを聞く。そして、江間氏には、本選出場者から「集中力を高めるためにはどうしたら良いか。」、「演奏の“甘み”は、どこから出るのか。」などの質問コーナーもあり、コンクールにはあまり見られない和やかな雰囲気で進められていた。
審査結果が出たところでトーク会は終わり、審査委貝長・原善伸による審査講評が行われ、一人一人に対する留意点が述べられた。
結果は、小学校教師の渡辺隆哉さん(49歳)が、見事1位となった。2位は大守善久さん、3位に渡辺勇さん、そして特別賞のVerde賞は森本素子さんが受賞した。
実は、渡辺隆哉さんと大守善久さんの得点は偶然にも同点となり、討議の結果、最終予選で満場一致で合格した渡辺さんが1位を受賞するに相応しいと判断され、この結果となった。これを見る限りでも、いかに僅差での熱戦が繰り広げられたかがお分かり頂けるのではないかと思う。
表彰式の後、優勝した渡辺さんの喜びの言葉で閉会となったが、全体を通じて思ったことは、アマチュアギタリストの凄さと大切さだ。優秀なプロを輩出する為のコンクールは確かに必要だ。しかし、この様な、アマチュアギタリストの為のコンクールも必要だと思う。アマチュアギタリストを蔑ろにしてはいけない。アマチュアギタリストこそが、ギター界の根底を支えてくれているからだ。そして、アマチュアギタリストの意識と実力の向上は、ギター界全体の向上に繋がるのだと思う。
この“全日本アマチュアギターコンクール”が、そのきっかけの一つになれればと思う。

■ コンクール会場
    第2回目もここで2001年8月19日に行われる


■ 最終予選出場者全員が貰える楯(左)と、入賞者の為のトロフィー


■ 最終予選の様子


■ 審査報告をする原審査委員長(右)


■ 入賞者表彰式の様子
    左 本選出場者9名
    中央 審査員
    右 原喜伸審査委員長


■ 入賞者表彰式の様子


■ 審査の間にくつろぐ審査員達


■ 審査委員長原喜伸より、一位入賞者渡辺隆哉へ手渡される賞状とトロフィー
[ 写真提供:週刊きちじょうじ ]


■ 一位入賞者:渡辺隆哉
[ 写真提供:週刊きちじょうじ ]
■ 二位入賞者:大森義久
[ 写真提供:週刊きちじょうじ ]


■ 三位入賞者:渡辺勇
[ 写真提供:週刊きちじょうじ ]
■ Verde賞受賞者:森本素子
[ 写真提供:週刊きちじょうじ ]


■ 本選出場者:深澤
[ 写真提供:週刊きちじょうじ ]
■ 本選出場者:原田和子
[ 写真提供:週刊きちじょうじ ]
■ 本選出場者:丸山
[ 写真提供:週刊きちじょうじ ]


■ 本選出場者:水野
[ 写真提供:週刊きちじょうじ ]
■ 本選出場者:佐々木信暢
[ 写真提供:週刊きちじょうじ ]
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