コンクールレポー
「第20回全日本アマチュアギターコンクール」
レポート:審査員 坪川真理子
主催:全日本ギター協会

2019824日(土)、三鷹市文化センター・風のホールにて、第20回全日本アマチュアギターコンクールが開催された。
 今年の
応募者総数は93名。第1次(「禁じられた遊び」〜前半のみ)、第2次の録音予選50名が合格。当日は1名のキャンセルがあり、49名が参加した。本選に進んだのは、例年通り10。審査員は7名で、全日本ギター協会より会長 志田英利子、委員 石田忠、井上仁一郎、坪川真理子、中島晴美(以上ギタリスト)、堀江志磨(ピアニスト)、ゲスト 荘村清志(ギタリスト)。
 
<第2次予選(録音審査)>

課題曲:練習曲Op.31-3(ソル)/現代ギター社版「発表用ギター名曲集」指定。
6月初めの録音審査は、ゲスト以外の審査員6名で行われた。5点満点×6人の合計点で、22点が合格のボーダーラインとなった。大体6人中4人以上が4(合格点)を付けた、ということになるだろう。この練習曲は私たちが想定していたより簡単だったようで、ほとんどの人がある程度のレベルで弾けていたため、少しの傷でも落とされた人が多かったと思う。音ミス(読譜ミス)やリズムミスは例年より少なかったが、いくつあっても1点減点で、間違いのないよう、全員で確認作業をしている。審査のポイントになったのは、5小節目の16分音符のスラーと、23小節目の装飾音のスラーのリズムが弾き分けられているかどうか、9小節目からの付点2分音符が3拍伸ばせているか、21小節目の連続スラーが明瞭に正しいリズムで出せているか、24小節目などのDの和音で内声が聴こえているか・・・といったところだったと思う。また、8分の6拍子は大きく取ると2拍子なので、1小節を6つではなく2つでカウントし、拍感を出すことも大事だ。同じ速さでも6つでカウントすると明らかに重くなってしまう。更に、テンポが不安定で減点になった人もいた。
 毎年、本選に残るべきレベルの人がこの録音審査で落とされることも少なくない。90名前後の半分近くが不合格となるこの審査は、恐らく日本一倍率が高いのではないだろうか。簡単な曲でも甘く見ずに充分な準備をして欲しい。また、再生不可能なCD1枚あったのは残念だった。応募要項に「通常の音楽プレーヤーで再生可能なもの」と明記してある通り、パソコンではなくCDプレーヤーで試してから送って頂きたい。
 

<最終予選>

課題曲:エンデチャとオレムス(タレガ)/現代ギター社版「発表用ギター名曲集」(リピート省略)
 最終予選課題曲は、 技術的に弾けた上でいかに歌うかがポイントになったと思う。エンデチャが速めなのにオレムスがゆっくり過ぎたり、エンデチャで大きく崩しているのに何故かオレムスはメトロノミックだったりと、バランスが悪い人も少なくなかった。(そういう人は、そもそもエンデチャのリズムが取れていないだけなのかもしれないが。)また、特にオレムスはレガートに繋ぐのが難しい曲だが、少しゆっくりめでも、丁寧に繋げられた人の点数が高くなった。楽譜の運指通りでは繋ぐのが難しいので、3弦の開放弦を使うなどの工夫が必要だろう。そして、毎年のことだが、技術的に弾けていても音楽的表現が足りない場合、合格点には達しなかった。 音ミスは少なかったが、シが♮になっているようなミスは致命的だ。音楽的な参考にするかどうかはともかく、音源を聴くなどの努力も必要ではないだろうか。
採点は5点満点で審査員7名分の合計を出し、今回は27点以上の10名が合格となった。ちなみに、もう一歩だったのが26点の4人で池端広幸、鈴木淳一、野本哲夫、矢﨑理江、25点が菊池智也、首藤智生、村松淳の3人だった(以上50音順)。
 

<本選>

 自由曲5分以上8分以内、曲数任意(時間不足や超過は減点。)    本選出場者発表前に昨年度優勝者の伊倉雅之がゲスト演奏し、インタビューなども行われた。以下、10名のレポートを演奏順に記す。「 」には他の審査員のコメントをまとめた。

佐々木宣博(のぶひろ)(東京):「秋のソナチネ」より 第1、第3楽章(佐藤弘和)
 2012年、2014年第2位。少しぼやけ気味なのが惜しいが、柔らかい音。歌ってはいるが全体的にダイナミクスレンジが狭く、1楽章と3楽章のコントラストもあまりない。技術は充分あるので、音楽的に練り上げれば確実に上位に入れるだろう。「姿勢が良い」「もっとメロディーを強調したい」「変化が欲しい」

久保田真悟(埼玉):「リュートのためのソナタ」SW46より序曲(ヴァイス)
 2016年特別賞、今回の本選最年少29歳。太い音だが、調弦がもう一歩。レガートで柔らかい演奏で、声部の弾き分けもできている。細部まで緻密でよく弾けているので、もう少し全体的な音楽の大きな方向性を付けられれば更に良くなるだろう。「上品な演奏」「ドラマティックな表現も欲しい」<第3位>

松田悠真(ゆうま)(兵庫):古風な小品(タンスマン)、「ソナタOp.61」より第1楽章(トゥリーナ)
クリアで美しい音。隅々まで意識が行き届いている演奏だった。敢えて言えば、低音のアルペジオはもう少しはっきりさせたい。技術と音楽のバランスがよく取れている人だと思う。最後の盛り上がりも余裕でキメた。「表現力がある」「計算し尽くされた演奏」 審査員7名中6名が1位を付け、文句なしの優勝だった。<第1位>

山内文夫(千葉):オリエンタル(グラナドス)
 2011年第2位。ソロで弾くには非常に難しい曲だが、アレンジ(佐藤弘和)の良さを引き出し、ギターオリジナルであるかのように美しく聴かせる。弱音もはっきりと通る美音だが、できれば繰り返しでもっと変化の工夫が欲しい。一音一音に想いが込められた演奏で、拍手も多かった。「音色の使い方が上手い」「センスが感じられる演奏」<2  

金居秀治(しゅうじ)(埼玉):マジョルカ(アルベニス)
 細めだが綺麗な音。メロディーを美しく歌っているが、全体的にダイナミクスが足りずおとなしい印象。中間部は少々弾き急ぎ気味で、もう少し「タメ」が欲しいが、難所もよく弾けていた。「フレーズとフレーズの間が少し詰まって不安定」「もっと大胆に表現して欲しい」  

山口直哉(千葉):最後のトレモロ、ワルツ第4番(バリオス)
 2016年第2位。予選はダントツの1位通過だった。綺麗なトレモロだが、低音が大きくてメロディーが伴奏に負けているのが惜しい。度忘れもあった。ワルツは速めのテンポで弾き切れていなかったのだが、太い音でノリが良く印象に残った。「推進力がある」「ミスが惜しかった」「もう少し落ち着いて演奏して欲しい」<特別賞>  

前田真悟(千葉):アッシャーワルツ(コシュキン)
 2016年次席。弾き直しが惜しかったが、リズム良く弾けている。低音が少しぼやけ気味で、肉の音になっているので爪を使うと良いだろう。「ダイナミックレンジが広く迫力がある」「難しい部分でワルツの拍感がなくなるので、一拍目を意識すると良い」

渡部信一(神奈川):ワルツ第3番(バリオス)
 昨年次席&特別賞。細めだがクリアな音。度忘れが惜しかった。時々音がつぶれるが、難所もごまかさず音楽的な演奏だった。「姿勢が良い」「響きが薄いのが惜しい」「もっと1拍目のエネルギーを感じて演奏して欲しい」  

蔦尾和廣(神奈川):皇帝の歌(ナルバエス)、マズルカ・ショーロ(ヴィラ=ロボス)
 本選初出場。硬質のクリアな音だが、時々鳴らない音があるのが惜しい。マズルカ・ショーロは読譜ミスもいくつかあったようだ。どちらの曲もゆっくりの練習が必要だと思う。「タッチは良いが、ビリつく音が多い」「丁寧で上品な演奏」

高木 薫(神奈川):パバーナ(タレガ)、スペイン舞曲第5番(グラナドス)
 度忘れが惜しかったが、どちらもよく弾けている。「アンダルーサ」はリズミカルな部分と歌う部分のコントラストを付けたい。「端正な演奏」「アンダルーサはもう少しエキサイトして欲しい」「会場の雑音でミスをしたようで気の毒だった」<次席>  

<総評>

 本選の採点は6点満点で、1位〜6位にそれぞれ61点を付けて合計する方法。(7位以下は0点。)  1位はダントツだったが2位は同点で決選投票となり、43の僅差で山内さん、3位が久保田さんに決まった。2位を2名にしたいところだが、このコンクールでは賞品の関係で必ず1名ずつ順位を付けなければならないという事情があるので致し方ない。
特別賞は、順位に関わらず「印象に残った人」という観点で選んでおり、バリオスのワルツ第4番が印象的だった山口さんに贈られた。他に、最高齢の渡部さんの名前も挙がったが、既に何度か特別賞を受賞していることもあり、山口さんを推す声が多く、今回は短時間で決まった。

年代的には201人、302人、606人、701人で、若者 vsシニアという印象の本選会となった。(ちなみに、優勝の松田さんは20代に見えるが30歳とのこと)。また、蔦尾さん以外は全員本選出場経験者であり、入賞経験者が多いのも特徴的だった。
 今回は、特に上位3名の完成度が高く、レベルの高い上位争いだったと思う。差が付いたのは、やはり選曲とダイナミックレンジではないだろうか。とにかく好きな曲を弾く!というのがアマコンらしさなのかもしれないが、やはり優勝を目指すならコンクール向きの曲が必要になるだろう。審査にはもちろん曲の難易度も加味されるが、実際は難しいけれど地味な曲よりも、派手な曲の方がダイナミックレンジも広げられ、アピールしやすいものだ。また、後半で弾いた5人の方は全員に度忘れがあり、舞台裏で前の人の演奏を聴いていて連鎖した可能性もあるが、コンクールでは痛いミスとなってしまった。
   来年は、毎年同じ第1次予選(テープ審査)課題曲が「愛のロマンス(禁じられた遊び)〜前半のみ、繰り返し省略(作者不詳)」。第2次予選(録音審査)が「ワルツホ長調(ソル)」(リピート省略&D.C.あり、現代ギター社版「発表会用ギター名曲集を使用)、最終予選(公開審査)は「エストレリータ(ポンセ)(リピート省略、現代ギター社版「発表会用ギター名曲集2を使用)となっている。来年も是非、リベンジを含めまた多くの方々にご参加頂きたい。

2019年第20回全日本アマチュアギターコンクール写真 (入選者の順番は演奏順となっています)    
         
 第1位:松田悠真(兵庫)  第2位:山内文夫(千葉)  第3位:久保田真悟(埼玉)  次席:髙木 薫(神奈川)  特別賞:山口直哉(千葉)
         
 入選:佐々木宣博(東京) 入選:金居秀治(埼玉) 入選:前田真悟(千葉) 入選:渡部信一(神奈川)  入選:蔦尾和廣(神奈川)
         
ゲスト演奏:
第19回全日本アマチュア
ギターコンクール優勝者  伊倉雅之
 開会挨拶
全日本ギター協会会長  志田英利子
 表彰挨拶:ゲスト審査員
荘村清志
 講評:審査員代表
石田 忠
 司会:松本佳子
    
 入賞者・入選者・審査員   賞品