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目指せ、ギターの甲子園。

REPORT

第24回全日本アマチュアギターコンクール 開催レポート

2023年8月19日(土)、第24回全日本アマチュアギターコンクールが例年通り三鷹市芸術文化センター・風のホールで催されました。
レポート:審査員 坪川真理子 主催:全日本ギター協会


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今回は応募者89名から、第2次(録音)審査に合格した50名中、1名の辞退があった。 更に1名の欠席により48名で最終予選が競われ、その中から10名が本選に選ばれた。

審査員は、全日本ギター協会より会長 志田英利子、委員 石田忠、宇高靖人、坪川真理子、中島晴美(以上ギタリスト)、 堀江志磨(ピアニスト)、ゲスト江間常夫(ギタリスト)の7名。



<第2次予選> 課題曲:カンタービレOp.31-10(ソル)/現代ギター社版「発表会用ギター名曲集」指定
6月に行われた録音審査については、私が体調不良で欠席してしまったため、他の審査員から聞いた話をまとめる。
全体的にゆったりとしたテンポで弾く人が多かった。スラーの処理を迷った方が多い印象だった。フレーズをきちんと理解し、二声での動きがなめらかに弾けている人は審査に通った。無難な演奏が多く、もっと歌っても良いと思った。  また、残念ながら再生不可のCDが2枚あった。「音楽プレーヤーで再生できること」としているのは、PCで再生できてもCDデッキでは聴けないことがあるからだ。来年からデータでの提出が可能になるので、このようなトラブルがなくなることを期待したい。

<最終予選> 課題曲:ラグリマ(タレガ)~繰り返し省略、D.C.あり/ギタルラ社版「新ギター教本」指定
最終予選については、低音や内声とのバランスを取った上でメロディーを歌うかというのがポイントになったと思う。テンポはゆっくりでも速めでもOKで、ゆったり聴かせられれば良い。同じ速さでも、余裕がなければ聴衆には弾き急いで聴こえてしまうことがある。技術的には優しいが音楽的に歌うのが難しい曲なので、ミスはなくても音楽的な部分でブレスが感じられないとか、一本調子で合格点に達しなかった人もいた。全体的に、緊張で委縮してしまうのかダイナミクスの幅がかなり狭い人が多かった。広いホールで聴衆に聴かせるには、自分で思っているより大げさに表現しないと伝わらない。メロディーを歌いながら、あるいは録音して聴いてみるのも良い練習になるだろう。今年も「5点満点の5」(文句なしで合格)を付けられた人は非常に少なかった。

採点は5点満点で審査員7名分の合計を出し、今年は29点以上の10名が本選に進んだ。ボーダーラインの28点は奥野正寛、半田純一、矢崎理江、山口直哉の4名。27点はなし、26点は野中久仁子、25点が池端広幸、河原稔、廣島瑞穂、 森山隆であと一歩だった(以上50音順)。

<本選>  自由曲5分以上8分以内、曲数任意(時間不足や超過は減点。)

本選出場者発表前に昨年度優勝者・佐々木宣博がゲスト演奏を行った。以下、10名のレポートを演奏順に記す。「 」は他の審査員のコメントをまとめた。

古田 英生(神奈川):さくらの主題による変奏曲(横尾幸弘)昨年度第3位。とてもクリアな音でメロディーと低音をたっぷり聴かせる。 少し硬めの音だが曲に合っている。変拍子は少し弾き急ぎ気味だが、ハーモニックスが綺麗で手の内に入っている印象。客席で携帯が鳴るハプニングにも動 じない集中力を見せた。「テクニックがある」「説得力のある演奏」<第1位>  

永松 知雄(千葉):エンデチャ・オレムス、アラビア風奇想曲(タレガ)、低音が少しこもり気味でメロディーが細めだが、丁寧に歌う。緊張のためか 度忘れがあったのが惜しい。アラビア風はもう少し自由度が欲しかった。「ギターの響きを客席に届ける意識が欲しい」「歌心が感じられる」

清田 和明(東京):秋風のスケルツォ(清田和明)、「黒いデカメロン」より 戦士のハープ(ブローウェル) 予選1位通過。2017年第3位。調弦がもう一歩。ギターをよく鳴らしている。左右とも力みが見られるので、もう少し脱力できると楽に弾けるだろう。ど ちらの曲もギタリスティックでリズミカルなので、違うタイプの曲を組み合わせたい。「自作曲が印象的」「メリハリが上手」「古典の曲も聴いてみたい」<次席>  

橘 智亜紀(新潟):アルハンブラの思い出(タレガ) 調弦の音が大きいのが少し気になった。メロディーが小さくて低音に負けてしまうのが惜しいが、トレモロの粒は揃っている。A部低音に読譜ミスがあ るようだ。好感の持てる丁寧な演奏だった。「爪が弦に当たる雑音が気になった」「ダイナミックレンジの幅を広げられると説得力が出る」「心地良いトレモロ」  

田中 章雅(東京):「バーデンジャズ組曲」より シンプリシタス、サンバ風ロンド(イルマル) 柔らかい音。低音はもう少し響きが欲しいが、メロディーをとにかく綺麗に魅力的に弾く。サンバ風ロンドは少し弾き急ぎ気味。目立つミスが多かったが、楽しそうな演奏姿にこちらも嬉しくなった。「ギターを響かせる感性が良い」「拍感が足りない」「前向きな演奏」

渡辺 綾子(東京):アラビア風奇想曲(タレガ) 柔らかい音だが、特に親指の音が少しこもり気味。細かい傷はあるが、全体の流れはとても良い。安定感があり、のびのびとした演奏だった。 もう1曲組み合わせられれば、更に上位を狙えたかもしれない。「小さなミスが散見されたのが惜しい」「スマートな演奏で響かせ方が上手」<第3位>  

若松 良 (東京):フーガBWV1001(バッハ) 調弦がもう一歩で、やはり音が少しこもり気味だった。度忘れがあったが、気にせず前へ進められたのは素晴らしい。バッハなりの自由度があると更に良いだろう。「もう少し力強いバッハを聴きたい」「難曲をよく弾いている」  

後藤 眞次(神奈川):ファンタジー(ヴァイス)、フリア・フロリダ(バリオス) 少し硬めだが良い音だ。ファンタジーは細部まで意識が届いている、ごまかしのない演奏。バリオスは速めだが快いテンポ感。ダイナミクスがもう一歩広がれば更に良いと思う。「もう少しフレージングの間が欲しい」「音楽の流れが良い」「正統派」<第2位>    

首藤智生(神奈川):組曲「スペインの城」より オリーテ、松のロマンス、トゥレガノ(トローバ) やはり調弦の音が大きいのが気になる。少しこもるが柔らかい音。細部が聴こえにくいのが惜しいが、テンポ感はとても良かった。ダイナミクスが広げられれば更に良くなるだろう。「一音一音意識して練習すると良い」「音楽の流れは良い」  

西川 知ひこ(埼玉):舞踏礼讃(ブローウェル) 硬めだがよく通る音。全体的に休符が感じられず、特に第2楽章はリズムがアバウトだったのが惜しいが、迫力のある演奏だった。「楽譜から離れた解釈が目立つ」「音色の変化などをうまく使っている」「リズム感がもっと欲しい」<特別賞>


<総評>
今回は、審査員7人中4人が1位を付けた古田さんが文句なしの優勝となった。4点差で後藤さん、更に3点差で渡辺さんが続いた。2位の後藤さん、3位の渡辺さん、次席の清田さんまで1人ずつ6点(1位)を付けた審査員がいるのが面白い。
特別賞は順位に関係なく「印象に残った人」という観点で選んでいるが、今回は順位的にも5位だった西川さんが選ばれた。 
本選は40代4人、50代1人、60代3人、70代2人で、「昔のアマコンに戻ったみたい」というスタッフの声が聞かれた。最終予選が技術的に難しい曲だと若い人が有利になり、易しめの曲だとシニア層が有利になる傾向にある。今回は「ラグリマ」だったのでちょっとしたミスが命取りとなり、本選出場経験者は3人だけで、7人が初出場だった(例年だと半々くらい)。  
本選は特に低音がこもり気味の人が多く、ベース音の大切さを改めて感じた。その中でメロディーとベース音をバランス良く響かせ、しっかり演奏できた人が上位入賞したと思う。
来年は、「愛のロマンス」の第1次予選がなくなる。これは、2次予選のMDやCDの再生不可を減らすべく形式的にやっていたものなので、データ提出可能になる来年からは不必要と判断したためだ。


今回で当コンクールを立ち上げた志田会長が名誉会長となり、宇高新会長が引き継いだ。また、委員として楠幸樹(音源データ受付担当)、松本努(監査)、伊藤亘希(HP)の3人が新たに加わって新体制を支えることになった。  
録音予選が「タンゴOp.19-3 Op.50-3(フェレール)~くり返し省略、D.S.あり」、ステージ予選(公開審査)が「月光Op.35-22(ソル)」/いずれも「発表会用ギター名曲集」(現代ギター社版)を使用となっている。
尚、(フェレール)については、Op.19-3 と Op.50-3 のどちらの表記も存在するため、どちらでも可とする。  参加費も振込み可能となり手続きが簡素化されるので、多くの皆さまのご参加をお待ちしたい。

バナースペース

全日本ギター協会

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