本文へスキップ

目指せ、ギターの甲子園。

REPORT

第26回全日本アマチュアギターコンクール 開催レポート

2025年8月23日(土)、第26回全日本アマチュアギターコンクールが例年通り三鷹市芸術文化センター・風のホールで催されました。
レポート:審査員 坪川真理子 主催:全日本ギター協会


///////////////////////////////////////////////////////////////////////// 
今回は応募者69名から、録音予選に合格した50名全員でステージ予選が競われ、10名が本選に選ばれた。審査員は、全日本ギター協会より名誉会長 志田英利子、会長 宇高靖人、委員 伊藤亘希、坪川真理子、中島晴美、松本努(以上ギタリスト)、ゲスト下山静香(ピアニスト)の7名。


<録音予選> 課題曲:ギャロップ Op.32-6(ソル)くり返し省略、D.C.あり/現代ギター社版「発表会用ギター名曲集」指定

 6月に行われた録音審査は、少し遅めのテンポでも許容範囲だったが、4拍子のように(8分音符単位でカウントしている)重たい演奏が少なくなかった。同じ速さでも、1小節を2つでカウントできれば軽く聴こえるものだ。また、テンポの統一感がない演奏も気になった。 読譜ミスとしては、段落の最後で半拍抜ける、和音の中音が違う(小節4の最後)、ないはずの低音を弾いてしまう、などのパターンが見受けられた。他に、装飾音の速さが揃っているか、16分音符の連続のリズムが均一であるか、特に段落ごとに低音の消音ができているか、などで差が付いたと思う。 去年からデータ提出になったので、再生不可能な音源による失格がなかったのは非常に良かった。  

<ステージ予選> 課題曲:アデリータ(タレガ)くり返し省略/ギタルラ社版「新ギター教本」指定

最終予選については、テンポは速めでもゆったり聴かせられれば良いのだが、弾き急いで聴こえてしまう人が少なくなかった。メロディーを歌うのはもちろん、低音や内声とのバランスもポイントになったと思う。伴奏音が大きすぎるのはNGだが、小さすぎてもいけないので意外と難しい。ミスはなくてもブレスやビブラート、リタルダンドなど音楽的な部分が足りず、合格点に達しなかった人もいた。また、ダイナミクスの幅が狭くなりがちで、楽譜のクレッシェンドやデクレッシェンドはかなり大げさにやらないと客席には伝わらない。「もっとコテコテに歌ってほしかった」という審査員の声が多かった。今年も「5点満点の5」(文句なしで合格)を付けられた人は非常に少なかった。

採点は5点満点で審査員7名分の合計を出し、今年は27点以上の10名が本選に進んだ。ボーダーラインの26点は金居秀治、日下部毅明、野中久仁子、山口直哉の4人。25点が永松友雄であと一歩だった(以上50音順)。

<本選>  自由曲5分以上8分以内、曲数任意(時間不足や超過は減点。)

 本選出場者発表前に昨年度優勝者・田中章雅がゲスト演奏を行った。以下、10名のレポートを演奏順に記す。「 」には他の審査員のコメントをまとめた。

成澤千加(東京):ショーロス第1番(ヴィラ=ロボス)
テンポ感が良い、力強い演奏。ミスが多かったのと、セーハが少し甘いようで和音がつぶれる箇所が多いのが惜しかった。首に力が入っているので、もう少し脱力できると楽に弾けると思う。全体の流れは良かった。「甘い音色が欲しい」「中間部の表現が丁寧」

竹田良二(三重):フリア・フロリダ(バリオス)
柔らかい音。拍感があり、心地良い演奏だった。度忘れがあったが、流れを止めなかったのは素晴らしかった。「弱音が鳴り切っていない時があり惜しい」「メロディーがのびやかだった」

石井範昭(東京):夏の庭で(佐藤弘和)
昨年度第3位。クリアな音。ステージ慣れしている印象。かなり鳴る楽器ということもあるが、もう少し弱い方へもダイナミクスを広げたい。曲の雰囲気がよく出ていたと思う。「安定した演奏」「素朴で繊細な和声変化をよく表現している」 <次席>

田口昌義(埼玉):大聖堂 第1、3楽章(バリオス)
昨年度ファイナリスト。少し細いがよく通る音。a指はアポヤンドとアルアイレの音の凹凸が気になるので、アルアイレでコントロールできれば更に良いと思う。3楽章は時々すべり気味だったが、難所も弾き切った。「表現(自由度)、強弱がもっとほしい」「気合いを感じる演奏」
 
大守善久(千葉):ヴォカリーズ(ラフマニノフ/自編)、「仮面舞踏会」よりワルツ(ハチャトゥリアン/自編)
 予選1位通過。チューニングがもう一歩。音が割れ気味なのが惜しいが、大胆で迫力のある演奏。ギタリスティックで効果的なアレンジだった。「アレンジが独創的、意欲的」「曲への愛が伝わる」 <特別賞>

久保田 拓(沖縄):主題と変奏(バークリー)
綺麗でクリアな音。左手の親指がネックから出ているのが気になった(左手の負担になるため)。拍感がもう一歩なのが惜しいが、完成度の高い演奏だった。ダイナミクスが広がると更に良いと思う。「変化が多彩」「理知的な演奏」 <第3位>

西川知ひこ(埼玉):シンプル・エチュード第7番(ブローウェル)、フーガBWV1001(バッハ)
23年度特別賞。芯のある音。ブローウェルはキレのある演奏だったが、楽譜通りの休符を守りたい。バッハは度忘れが何度かあり、弾き直したのが惜しかった。テンポ感が安定すると更に良いだろう。「和音のバランス感が良い」「ドラマチックなバッハ」

佐藤拓真(福島):ハンガリー幻想曲(メルツ)
綺麗な音。良い意味で力が抜けていて、ダイナミクスの作り方が巧い。アルペジオのpimaが少し詰まる感じがしたが、最後は盛り上げて聴かせた。「集中力が素晴らしい」「ヴィルトゥオーゾ性をよく表現できている」「音色の変化が魅力的」 <第1位>

種部(たなべ)純一(東京):「ポーランド組曲」よりアントレー、オベレク(タンスマン)
チューニングが大きいのが少し気になった。味わい深い美音。拍感が安定していて、安心して聴けた。音質の変化も付けているが、もっと思い切ってやっても良いと思う。「曲の対比が良い」「セゴビアを思い起こさせる演奏」 <第2位>

阿部匡伸(まさのぶ)(神奈川):ソナタK.11(スカルラッティ)、プレリュード第1番(ヴィラ=ロボス)
昨年度ファイナリスト。クリアで曲に合っている音。緊張のためか、スカルラッティはミスが散見されたが流れを止めなかった。1曲終わった後の余韻がもう少し欲しかった(時間制限のせい?)。ヴィラ=ロボスは中間部のアルペジオの粒が揃うと更に良くなると思う。「低音のメロディーが良かった」「中間部の流れが良い」



<総評>
 本選の採点は6点満点で、1位〜6位にそれぞれ6〜1点を付けて合計する方法。7位以下は0点。)
今回は、審査員7人中4人が1位を付けて佐藤さんがダントツの優勝となった。7点差で種部さん、更に1点差で久保田さんが続いた。2位の種部さん、3位の久保田さん、次席の石井さんまで1人ずつ6点(1位)を付けた審査員がいた。
 特別賞は順位に関係なく「印象に残った人」という観点で選んでいるが、今回は順位的にも5位で、非常にインパクトのある演奏だった大守さんが選ばれた。他に、田口さんの名前も挙がった。
 本選は20代1人、40代1人、50代4人、60代2人、70代2人だったが、初出場で20代の佐藤さんの優勝となった。今回は本選出場経験者は5人で、ちょうど半分だった。毎回本選出場者の顔ぶれが入れ替わるのが、アマコンの面白いところだと思う。本選は熱い演奏が繰り広げられ、点を付けるのに悩んだ審査員も多かったのだが、蓋を開けてみれば佐藤さんの圧勝だった。 若者が優勝するたびに、客席のシニア層から嘆きの声が聞こえてくるのもアマコンらしい。他のコンクールよりミスに寛容でシニアに甘いと言われるコンクールではあるが、色々な年齢層の方にチャレンジして頂きたいと思う。

 来年度は、録音予選が「ノクターン」(ヘンツェ)~くり返し省略、ステージ予選(公開審査)が「魔笛の主題による変奏曲Op.9」よりテーマ(ソル)/いずれも「発表会用ギター名曲集」(現代ギター社版)を使用のこと(*運指およびスラーは自由)となっている。

 なお、このたび「第1回アマコン・オンライン」の開催が決定したことをお知らせしておきたい。演奏動画を送付頂くと、アマコン審査員5人からのコメントがもらえるというものだ。アマコンリピーターの方も、初心者の方も、首都圏のコンクールに参加するのが難しい方も、お得なワンレッスン感覚で是非お気軽にご参加頂きたい。(詳細は当協会HPまで)



佐藤拓真
<第一位>

種部(タナベ)純一
<第二位>

久保田拓
<第三位>

石井範昭
<次席>

大守善久
<特別賞>

阿部匡伸(マサノブ)

田口昌義

竹田良二

成澤千加

西川知ひこ

田中章雅
<ゲスト演奏>

下山静香
<ゲスト審査員>

会長挨拶

集合写真

バナースペース

全日本ギター協会

お問い合わせ:

info@zennihonnamatyua.sakura.ne.jp